アレクサンダーテクニーク / 海津賢 (かいづけん / Ken Kaizu)

アレクサンダーテクニークや音楽や、いろいろなことを書いていきます。

大幅加筆@即効性のある解決方法

2018年1月3日大幅加筆

教えてもらったら問題が忽ち解決するような、即効性のある解決方法は確かに存在します。しかしほとんどの場合、効果が長続きした試しがないのは何故でしょうか。
新しい方法は、あっという間に習慣となってしまい、変化し続ける自分の役に立たなくなります。そして新しい困ったことを作り出します。
困ったら、また即効性のある解決方法を手に入れることもできます。
数年後、あなたは抱えきれないくらいの解決方法(メソッド)に溺れそうになって、立往生します(えらそうに言っている私もなんども溺れたし、今でもまだ溺れそうになることがあります!)。

だからこそ、その場しのぎの “how to” ではない、恒久的に役に立つことを学ぶのは大切です。アレクサンダーテクニークの提案は「自分の習慣に気づいて、改善の役に立てませんか?」という、とてもシンプルなものです。

習慣に気づくために、自分自身が何をしているのかを観察する事はとても役に立ちますが、はじめのうちは観察しても、自分の習慣に気づくことは難しいです。なぜなら、観察の仕方すら習慣的だからです。鏡で自分を観察するにしてもです。私たちは今までに得た経験に基いた見かたでしか、鏡を見ることはできません。もし経験に関係なく十分な観察ができるのなら、観察から解決方法が発見実行でき、困った事はすでに解決しているはずです。しかし解決していないのが現実です。解決方法の発見の仕方すら習慣的なのです。なんともやっかいな。
でもがっかりする必要はありません。ほとんどの人間は、私ももちろん含めて、こんなものなのです。いい加減なのです(だからこそ、にんげんはとても愛らしいです)。
そこで客観的に観察して教えてくれる教師が必要となります。

アレクサンダーテクニークのレッスンでは困っている事、例えば「呼吸」や「緊張」や「アンブシュア」や「肩こり」や「疲れやすさ」や「楽器演奏」、「生きにくさ」を何とかしようと直接には取り扱いません
レッスンの内容は流派や先生によって違いますが、わたしは主に、みなさんが毎日何度もやっている、椅子から立ったり座ったりする行動を中心に行います。
このレッスン方法はアレクサンダー氏が発見・発明した優れもので、チェアワークといいます。
このシンプルでなんて事はない動きの中にさえ、あなたの困っている事を引き起こしている、身体や筋肉の理にかなっていない使い方や考え方があらわれます。
レッスンでは教師の手による助けを借りる事で、椅子に立ったり座ったりするときの、理にかなっていない身体や筋肉の習慣的な使い方をやめる練習を行います。自分の習慣にちょっと待って=Stopを言うのです。
アレクサンダーテクニークではこれを抑制(インヒビション)といいます。
レッスンの初期段階ではこのように、椅子から立ったり座ったりする連続した動きの中で抑制する練習を何度も繰り返します。そして理にかなった使い方の経験を積み上げていきます。


チェアワークをするフレデリック・マサイアス・アレクサンダー氏(19秒より)


あなたは練習を続けるとしばらくは、自分が間違った事をやっている感じがして、取り組みが役に立っている感じ(実感)がしないかもしれません。しかしそれは良い兆候です。なぜなら感じ方さえ習慣的なものだからです。観察と同じく、感覚(感じ方)はあてになりません。あなたは正しいと感じない。それは今までと違うことが選択できはじめている証です。あなたが正しいと感じ、うまくいったと実感したときは、前と同じ事をしているだけです

抑制できるようになってくると、少しずつ自分が本来持っている機能、理にかなった身体(心身)や筋肉の使い方ができるようになってきます。この新しい経験の積み重ねによって、習慣的ではない観察ができるようになっていきます。感覚(感じ方)もあてになっていきます。そうなってきた頃には、以前の観察はただ見えているだけで何もできていなかったか、見当違いな観察だったと分かるでしょう。
椅子から立ったり座ったりするシンプルな動きの中で、自分の習慣を止める(抑制する)ことが、どうして自分の困ったことを改善するのに役立つのでしょうか?私たちの困ったことは大体において、椅子から立ったり座ったりする時よりも複雑な習慣がもつれ合ったものです。この複雑な習慣をほどいていって、習慣のひとつひとつを抑制するのに、チェアワークで培った習慣を抑制する経験を生かしていきます。このように一歩一歩、問題の根本から見直していくのはシンプルだし、結果的には早道です。

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チェアワークをする筆者


アレクサンダーテクニークを学ぶにはちょっと時間がかかります。たとえば語学を学ぶとき、はじめはことばを聴き取れません。何が何だか分かりません。学び続けると段々と少しずつ聴こえるようになり、理解して使えるようになります。アレクサンダーテクニークの学びは、語学を学ぶことと、ちょっと似ています。


https://www.nobelprize.org/mediaplayer/index.php?id=1584
↑フレデリック・マサイアス・アレクサンダー氏の教えるアレクサンダーテクニークは、その論理性から何人もの科学者、哲学者などがレッスンを受講していました。ニコラス・ティンバーゲン氏(動物行動学者 ノーベル医学・ 生理学賞受賞)が、ノーベル賞の受賞記念講演で、多くの時間を使ってアレクサンダーテクニークの有用性について紹介しています。(1973年12月12日)